3/24 母の肩を揉む

 兄の卒業式に合わせて母が上京してきた。父も本当は来る予定だったのだが、田舎の職場というのは頭が硬く、もし東京に行ったら二週間出勤を自粛しろとのお達しが出てしまったので泣く泣く留守番をしている。

 兄と母と私で焼肉を食べた。隣の酔っ払ったサラリーマン6人組がうるさく、多少うんざりとしたがこちらのテーブルもそれに負けないくらいの声量で笑った。暗い照明のなかで火を見ていると雰囲気で酔ってしまい、黒烏龍茶を飲みながら母と腕を組んだ。

 

 父の代わり(というのは、もし父が来れることになってもそうしているのでおかしいのだけど)に母とホテルに泊まった。

 風呂は広く、はしゃいで湯を溜めた。ロクシタンのバスキューブがあったので入れてみたが、なんだか気取った匂いがするな、と思っただけであまりリラックスできなかった。ゆずの香りがするバブをください。

 

 風呂を上がり、母がスイーツパラダイスに行きたいというので店の話をしながらベッドでダラダラとした。なんとなく母の足を揉んだら、背中をしてほしいというので背中を押した。とても硬かった。肩甲骨付近を押しても、凝りすぎているのか痛がるだけだったので肩と首を揉んだ。肩も首も当然のように硬く、押されながら母はとても気持ちよさそうにしており、お母さん、と思った。少女の我儘さと気高さを失いきれなかった、仕事ができ、そして褒められたがりの私のお母さん。

 焼肉屋で母はよく地元の公務員学校の話を出した。それに私と兄は愛想笑いでしか返さないので、その度に少し黙り、忘れたようにどうでも良い話をして、そして将来のことや就職のこと、仕事のことが話題となると再びそれを口にした。絶対に地元に帰って公務員になるよ、と言えない自分が親不孝のようで苦しくなった。

 

 母をマッサージし終えると、お返しに、と言って私の脚を揉んでくれた。人に脚を揉まれる気持ちよさったらない。最高の瞬間のうちのひとつ。

 

 明日は大学の卒業式だ。きっときっときっと泣かないままでいたい。